3日間プールを休むとどうなるのか?:あえてブランクを入れて試してみた

 私はここまでの原稿をおおよそ書き上げた2024年の10月上旬に、あえてプールへ通うのをしばらくやめてみることにした。そのきっかけは、ちょうどたまたまプールの定期会員券の更新期限を迎えたからだった。

 それまで私は退院してからのほぼ半年間、毎日のように欠かさずプールでのリハビリを続けていたので(別に無理をして通っていたわけではなく、単に楽しくて毎日行っていただけだが)、正直プールにいかない状態を続けると、何が起こるのかがわからなかった。

 そこでこの更新タイミングであえて数日間のブランク(休止期間)を入れてみることで、なにか上に書いたプール・ウォーキングに関する内容や効果・メリットになんらかの違和や変化を感じたりするのか、自分の身体を使ってテストしてみることにしたのだ。

 結論からいうと、私はこれまであまりにも水中での歩行に最適化した歩き方をしていたことに気づき、より水中抵抗を使って運動負荷・カロリー消費効率を高める水中歩行のメソッドを編み出すことができた。それは今回のブランクを通じて、「地上歩行に慣れた」結果でもあった。

 それはどういうことだろうか。具体的に説明しよう。

 まず私は、結果的に3日間(中2日)プールにいかない期間をつくった。本当はもう少し休止期間を設けるつもりだったのだが、結果的にはたった3日休んだだけでも十分なほど「成果」は得られた。ちなみにプールを休んでいた3日間、私は(特に登山などに行くこともせず)自宅そばの都市部で散歩(6000〜10000歩ほど)だけをすることにした。散歩といっても本当にゆっくりなペースで、しかも断続的に、だいたい長くても2時間弱ほど街中をぶらついてみたのである。

 そこでまず驚いたのは、地上歩行は水中でのそれと比べてかなり「疲れる」という事実だった。散歩を終えて帰宅すると、身体の節々にちょっとした痛みというか、疲労感の蓄積をたしかに感じるのである。やはり地上での歩行は、体重の負荷が直接かかってくるのと、主にアスファルトなどで舗装された硬い路面の衝撃を足で受け止めることから、(別段登山のようなハードな運動でなくても)水中歩行に比べかなりダメージが大きい。しかし、その消費カロリーは水中歩行とほとんど変わらないのである(であれば、水中歩行のほうが安全かつ健全に持続可能だ)。私が上で書いてきたプール・ウォーキングのメリットを改めて実感した次第である。

 次に驚いたのは、3日ぶりにプール・ウォーキングを再開したとき、あまりにも水の抵抗を強く感じたことだった。おおげさかもしれないが、まるで「流れるプール」で水流に逆らって歩いているような感覚を受けたのである。足も水の流れでふらついてしまう感じもあり、水流に身体を持っていかれるようだ。おおげさな比喩だが、「ドラゴンボール」ではよく「重り」をつけたまま戦闘したり、「重力」を上げて修行したりするシーンが出てくるが、まさにあの感覚である。浮力ではなく、水中抵抗がもろに負荷としてかかってくるのだ。

 最初、おそらくこれは「慣れ」の問題なのだろうと私は考えた。つまり、それまで水流や水中抵抗にこの半年のあいだ自分が慣れきっていたのが、たった3日休んだだけでその感覚を失ってしまったのだろう、と。私は正直、あまりの衝撃で「よくこんな大変な運動を毎日2時間もやっていたな」とすら思った。しかし結局、水中歩行は息が上がるほどの運動強度ではないので、またいつもと変わらず2時間水中歩行することはできた。

 そして私はこうした点に驚きつつも、いったいその「慣れ」とは具体的になんなのか? 思考と試行を反芻しながら水中歩行を続けた。はたして自分は、どういう身体運動の変化によって、ここまで水流や水中抵抗を感じるようになったのか? 3日前まではどうやって歩いていたのだろうか? 逆にこの3日間、自分は何を経験した結果、どのような変化が生じたのか? 私はこのような問いを身体に投げかけ、いろいろな試行錯誤を繰り返した。

 その結果として私が得た答えは、「足さばきの違い」であった。具体的には、水中歩行時の足の甲の動きや角度に変化が生じていたのである。

 というのも私がこのプールを休んでいる間、ちょうど雨の降った日があった。そのせいで地面が濡れていて、滑って転びそうになった。そのせいもあり、私はその日から、恐る恐る足をあまり上げず、ちょうどすり足のように歩行するクセがついていた。そもそも平坦な場所を歩く場合は特に段差もないのだから、足(膝や甲)を大きく上げる必要はない。浮力も働かない地上では、そのほうが効率的で安全な歩き方である。

 しかしこれをそのまま水中でやろうとすると、とたんに足に水中抵抗を大きく感じることになる。これは角度的に足の甲を床に対して「並行」に向けて歩行するため、甲や脛(スネ)の部分に水の流れと抵抗をもろに受けることになるからだ。

 逆にいえば、私はそれまでの半年間で、どうやら無意識のうちに水中歩行に最適化した歩き方をプール内で習得してしまっていたのである。色々試してみて分かったのだが、私はそれまで、ちょうど水中でぴょんぴょんと飛び跳ねるように歩いていた。角度的には、足を上げるときに足首と甲の力をふっと抜いて、床に対して「垂直」になるような足のさばき方をしていたのである。こうすると足の甲が水にひっかかることがなくなり、水中抵抗を受けにくくなる。つまり、私は水中での浮力をうまく使って足を脱力させ、なるべく水中抵抗を受けずに受け流し、疲れず長時間歩けるようなムーブを無意識のうちに習得していた。これが水中歩行に関する「慣れ」の正体であった。

 逆にこのことに気づくことで、私はより水中歩行の運動強度・トレーニング効果を高めることができるのではと考えた。具体的には、先述したとおり足を上げる際に甲を床に対して「並行」にし、甲と脛(スネ)を「面」のように使って、より多くの水をかくように歩くのである。比喩的にいうと、ちょうど足をブルドーザーで雪かきをするような感覚で動かし、水をごっそり大量に前へ押し運ぶようなイメージだ。このとき、膝から上の太ももの筋肉(ハムストリングス)全体を意識して、より下半身に力を入れてゆっくりと歩くようにする。ちなみにこれは股関節を支点により脚部に力を入れた動きなのだが、おそらく私は人工股関節を入れたため、無意識にこのような動きや力の入れ方を避けていたのだろうと思った。

 これにより、私はより水中抵抗を強く感じながら歩行する新たなムーブを習得した。実際その翌日、久しぶりに私はApple Watchを付けてプールに入り、心拍数を計測してみたが、以前よりも5〜15程度も心拍数が上がっていた。これは息が上がるほどの心拍数の上昇ではないが、無視はできない程度には運動強度は高まっているような状態だ。ハムストリングスも程よく使うため、脚部の筋力を鍛えるという意味でも良いムーブだと思われる。

 そしてなにより驚いたのが、この新しい(より水中抵抗を受ける)水中歩行を2時間したあと、スロープを使って地上に戻ったとき、私は「地上を歩くほうが水中より楽だ」と感じたのである。これは新鮮な衝撃だった。なぜならそれは、ちょうど半年前に私が初めてプール・ウォーキングを始めたときに感じた、「水中を歩くほうが地上よりも楽だ」というのと真逆の感覚だったからである。つまり私は、今回のプール休止期間を経て、ようやく地上での歩行に「慣れた」。あるいはこの半年のリハビリテーションがひとまず成功を収めて一段落し、水中歩行という行為がある種の「相転移」を起こした瞬間でもあったのである。

 私はこの一連のプロセスを経て、つくづくプールと身体(そして歩行)というのは奥が深いと痛感させられた。ただ当たり前のように歩くというだけの行為が、ここまで気づきと発見に満ちたものだとは、私も思っていなかったのである。

この記事は、2025年8月14日同名連載をリニューアルしたものです。あらためて、2026年9月10日に公開しました。

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