変わりつつある「食」のあり方 その1:在宅

井本 新型コロナの影響で、飲食をめぐる状況ががらりと変わりました。特に緊急事態宣言が4月7日に発令されてから、東京では外食産業などへの休業要請が行われましたね。その一方で人々の在宅時間が長くなり、手間のかかる料理にチャレンジしたり、テイクアウトやフードデリバリーが伸びたりといった、食をめぐるさまざまな風景の変化があったのではないかと思います。
 そこで今日は、稲田俊輔さん、粟飯原理咲さん、そしてPLANETS編集長の宇野常寛さんというメンバーで、現在進行中の食文化の変化について議論していきたいと思います。稲田さんは、南インド料理店「エリックサウス」など飲食店のプロデュースを手掛けられる食の提供側の一方で、『人気飲食チェーンの本当のスゴさが分かる本』などの著作やtwitterなどで「フードサイコパス」という食にこだわり抜く食べる側の視点からも、食にまつわる言葉を発し続けてらっしゃいます。粟飯原さんは、まだ「お取り寄せ」という言葉もなかった2003年に「おとりよせネット」を立ち上げ、その後も「レシピブログ」など、食にまつわるウェブメディアの開発運営を手掛けられています。さまざまな視点から、いまの日本の食をめぐる環境について議論できればいいですね。
 短期的なビジネス上の変化にとどまらず、「人が今、どう暮らし生活していくか」という文化の変容みたいなものを、食という観点から掘り下げていきたいと思いますが、そうはいってもあまり大きな話からしても雲をつかむようなものです。まずは今回の新型コロナ禍にあって、お二方の展開されるサービスでどんな変化があったか、お伺いできますか。
 
粟飯原 はい。弊社は2003年から「皆の暮らしをもっと楽しくわくわく心地よく」というコンセプトの下で、主にライフスタイル領域でテーマ特化型のメディアを運営しているんですが、今回のテーマに関しては、大きく該当するメディアがふたつあります。一つが「おとりよせネット」というメディアで、もう一つが弊社でやっている、約3万人の料理インフルエンサーの方々が参加する「フーディストサービス」です。

 最初のおとりよせネットの方は、2月後半に外出自粛の流れが出てきたときに、「お取り寄せ」というキーワードがすごく伸び始めました。具体的にGoogleトレンドのデータを見ると、4月6日以降と、緊急事態宣言が全国に拡大された4月16日に、一気に平常時の10倍ぐらい「お取り寄せ」というワードが検索されるようになったんです。その効果もあってか、4月はサービスの取材が殺到してテレビでも10件ぐらい特集を組んでいただいたりしました。

▲4月のGoogle Trend「お取り寄せ」の検索キーワード数

 ワード単位で見てみると、最初は「お取り寄せ コロナ」で自粛中でも取り寄せられるものを探して検索しているケースが多く見られましたが、2月後半から3月ぐらいにかけては特に「お取り寄せ 応援 コロナ」というワードでの検索数が多く見られました。店舗さんが打撃を受けていることがわかって、お取り寄せで支援しようという盛り上がりがすごかったんです。
 お取り寄せの世界では、人気がある店舗さんの場合、飲食店も含めて普段百貨店の催事で大きな売り上げを上げてらっしゃるケースがとても多いんです。今年は北海道物産展や九州物産展といった物産展が一気になくなってしまったので、物産展用に用意していた商品が在庫になってしまったことをSNSに投稿された店舗さんなどに対して、みんなで応援消費しようといった流れがよく見られました。

 お取り寄せの種類についても変化がありました。普段はとれたての北海道のウニといった地方産の高級食材のようなケースをイメージされる方が多いと思うのですが、コロナ禍では餃子やハンバーグといったお惣菜が人気でした。これは3食自宅で食べなくてはならない人たちにとって、やっぱり全部自炊するのは大変だから、冷凍保存ができて、簡単に温めて食べられて美味しい食卓の主役になれるアイテムとして重宝されたからですね。

▲RF1(アール・エフ・ワン)「店長のこだわりセレクション」。冷凍保存ができ、調理が簡単。

 あとは、この時期はスーパーに行く回数を減らしている方が非常に多かったので、長期保存ができるものが重宝されている傾向がありました。贅沢商品でいうとチーズケーキなどですね。お取り寄せは元々スイーツがかなり人気なんですが、「おうちにいてもちょっと贅沢になれる気分を味わいたい」「生ケーキは難しいけど、チーズケーキだったら日持ちがする」といった理由でお取り寄せする方が多かったようです。特に洋菓子店さんは実店舗を持っていらっしゃるお店も多いので、応援したいという流れもあったように思います。

▲お取り寄せで人気だったクリオロ「幻のチーズケーキ」

井本 今回の外出自粛の中で、#stayhomeというハッシュタグとともに手料理の写真をアップする景色もよく見かけたように思いますが、フーディストサービスの方でも変化はありましたか。

粟飯原 ありましたね。まずは2月末に小中学校の休校があったので、フーディストサービスの中の「レシピブログ」では「春休み×ランチ」「子供と作れる」といったワードでの検索が増えました。皆さん休校への対応として料理されていたようで、4、5月は過去最高ページビューを更新しました。

▲コロナウイルスによる家庭料理の変化に関するアンケート

 その後の完全自粛期間は、3食自宅でつくるようになったので、傾向としては真っ二つに分かれました。まずは3食作らなきゃいけないから、時短メニュー。たとえば麺類をランチに多く作っている方が多かったので、「麺類 時短」といったメニュー検索が急増しました。もう一つは、逆に在宅だからこそおうち時間を豊かに過ごすための趣味として新たに料理を始めた方が、お菓子を作り始めたんです。海外では料理人さんがバナナパウンドケーキ作って盛り上がったりしたんですが、その流れで日本でもバナナパウンドケーキを皆が作ってみる方が多かったようです。「ホットケーキミックスでおうちでできる 簡単おやつ」という検索ワードで、新しくパン作りやおやつ作りを家庭で始めて、趣味としての料理の楽しさに気づいた人もたくさんいたんじゃないでしょうか。

井本 なるほど、日常食のお取り寄せが増えたり時短レシピが求められる一方、お取り寄せで店を応援したり趣味としての料理を楽しもうという動きもあったということですね。運営サイドからは、なにかキャンペーンや働きかけはあったのでしょうか。

粟飯原 はい。「どういうおうちご飯を作りたいと思ってますか?」といったアンケートを実施したり、おうちご飯を楽しむ料理コンテストを実施したりしました。4月頃には学校給食で牛乳がとても余ってしまっていたので、「牛乳の大量消費のメニューを今発信すると、世の中の役にも立ちますよ」と料理家の皆さんに呼びかけをしたりもしましたね。

 普段からテーマを決めて呼びかけなどはしているんですが、今回は特にコロナ禍ということで、皆さんがおうちでも楽しめるものを一緒に発信しましょう、という旨の呼びかけをフーディストの皆さんにしました。

変わりつつある「食」のあり方 その2:外食産業

井本 エリックサウスなど稲田さんが手がけられる飲食店でも、実店舗にとどまらず通販を行っていますね。今回、どんな影響がありましたか。

稲田 3月9日以降、本当に一晩で状況が変わるくらいの勢いで、飲食店の店舗の状況は変わりました。具体的にいうと、突然売り上げが1/4〜1/5になるという世界です。営業時間の短縮要請もありましたし、集合商業施設の中に入っているというお店も多いので、うちの判断関係なく、その施設自体が自粛で開けられないこともありました。
 そうなったら、まずは通販ですね。実は通販は2、3年前から継続していたんですが、売り上げは飲食店に比べると本当に微々たるものでした。ただ、運が良いことに今年の初めに今後は通販を伸ばしていきたいね、ということで、工場の……というと口幅ったいぐらいのキッチンなんですが、たまたま規模を5倍ぐらいに拡大したところだったんです。

南インドカレー専門店エリックサウス 公式通販ショップ

 それもあって、飲食店の方の売り上げが激減する頃に積極的に「実はエリックサウスは通販やっています、こんなラインナップがあります」とSNSなどで打ち出したところ、ありがたいことに大きな反響をいただいて。ほとんどの方は、このコロナの状況でエリックサウスが通販を始めたと言うんですが……。

粟飯原 私もそう思ってました。

稲田 実際、昔からやっていたんです(笑)。結果、通販だけは前年対比2000%で、なんとか飲食店の店舗一軒分ぐらいの売り上げが出るような状況にはなりました。
 粟飯原さんが先ほど「応援」とおっしゃっていましたが、やはり単純にうちのカレーを家で食べたい方だけではなく、応援してあげなきゃという声もSNSでよく見かけましたし、今になって振り返ってみると、餃子やハンバーグがよく売れてた理由とおそらく同じですね。カレーは日常食として食べられるもので、なおかつ専門店のプロの味が楽しめることができる。この点で、インドカレーが通販に非常に向いた商品だったのかもしれません。そこに、今まで地道に築き上げてきたブランドイメージのようなものがちょこっと後押しをしてくれたのかなという実感を持っています。

井本 コロナに関係なく、以前から通販部門を大きくしようとしていたのは、どんな経緯だったのでしょうか。

稲田 昨年から業績をドラスティックに伸ばしたいなと考えていたんです。それまでは30席程度の店舗を出して、それを1年ぐらいかけて軌道に乗せて……という方法で、ゆっくりゆっくりエリックサウスという店舗を増やしてきました。ただ、一つブレイクポイントをつくるには、通販に限らず量販店や業務用に卸す物販を伸ばしていくということも見据えていってもいいのではないかという話が出ました。
 幸い、うちは本社が岐阜県の各務原にあるんです。田舎なので敷地だけはあって(笑)、体育館ぐらい広くてでかい建物を本社にしているので、コストもそこまでかからず、機材を入れて調理をしています。本当に民家の小さいキッチンくらいのサイズだったのを、倍にしました。いわゆる先行投資的に整備しておいて、これから何をやろうか考えていたところでたまたまコロナが来たので、急遽フル稼働することになりました。飲食店の方では店を閉めざるを得ない店舗が多かったので、そこで浮いたスタッフに集まってもらって、みんなでせっせと袋詰めをすることもできたので、結果的にすぐに通販に移行することができたと思います。

コロナ禍で顕在化したライフスタイルの分断 

井本 粟飯原さん、稲田さん、ありがとうございます。やはり、食べる側も提供する側もかなり状況が変わっているようですし、それが相互に影響しあって今があるようです。ここまでのお話を踏まえつつ、宇野さんの食生活は、どう変化しましたか。

宇野 いくつかあるんですが、まずはそもそも僕は料理能力ゼロで、経験値的には豚しゃぶを湯がくのが限界なくらいなんです(笑)。だから、普段は外食依存の食生活をしていました。そこでコロナが来て外食が不自由になった結果、今まで通販で食べなかったものをお取り寄せして食べるようになった。
 たとえば、僕は京都に長く住んでいたので天下一品のラーメンが好きで、お店に行きづらくなったタイミングでお取り寄せて食べたりしていました。ただ、天下一品はスープや麺はオリジナリティがあるんだけど、具がおいしくないんですよ。そこでどうするかというと、メンマとチャーシューと煮卵を別に手に入れようとするんです。ここからがポイントなんだけど、それくらいだったら頑張れば僕でも調理できるわけです。この面子でこんなこと言うのは本当に恥ずかしいのだけど、40歳過ぎて初めて気づいたんですが、意外と楽しい。要するに中食という形式を取ることで、料理を「つくる」という体験を楽しむハードルが下がっているのだと思います。

天下一品 オンラインショップWEB屋台

 これは言い換えれば自炊という日常と、調べてわざわざ店に食べに行くという外食の中間的な楽しみとして位置づけることができるはずです。

 あと、周囲で多かったのは、ちょっと価格帯が上のお店がはじめたデリバリーやテイクアウトのサービスを自宅で楽しむこと。というか、知り合いのFacebookやInstagramがこの数ヶ月はこの種の「あのお店がテイクアウトをはじめたので、自宅で楽しんじゃいました、感動!」みたいな投稿で溢れていました。ビジネスの観点からこうした飲食店の生存戦略を論じることに僕はあまり関心がないのですが、いち消費者の立場からは考えさせられるものがありました。

 これは要するに東京南西部を中心とした比較的若い中産階級に文化圏的、階級的に限定されたスタイルだということです。だから良い、悪いという話をしても仕方がなく、この新しい食文化のよりどころをどうより広い層に拡大していくのかが、今後の鍵になると思います。

井本 宇野さんがいま比喩的に地域に寄せておっしゃった分断のようなものは、粟飯原さんの話にもありましたよね。粟飯原さんは先ほど、食べることを「時短で」「簡単に」どう処理していくかという動きがある一方で、手間自体を「喜び」としてケーキをつくるという動きがあるとおっしゃっていましたよね。「おとりよせネット」と「レシピブログ」では、お客さんの層の違いもあると思うのですが、この相違についてはどうお感じになっていますか。

粟飯原 我々のサイトでいうと、おとりよせネットのユーザーさんは基本共働き家庭の方が多くて、共働きで忙しいから、ちょっと美味しいものを少し値が張っても取り寄せたいな、という方が多いように思います。外食で食べ歩くのが好きな方が、おうちでも美味しいものを食べるためにお取り寄せをしているというイメージですね。こちらは、都心に住んでいる方が多いです。
 一方でレシピブログは、どちらかでいうとお子さんがいらっしゃる家庭の主婦で、いかに工夫して、手早く、お金をかけずにいかに毎日料理をするか、という方が多い。こちらは、郊外に住んでらっしゃる4人家族の方が多いイメージです。
 二つの層はもともと別の消費層ですが、今回は両者ともに餃子やカレーといった、日常的な品目の需要が大きかったので、トータルのお取り寄せがすごく伸びたのかなと思います。もちろん、極端に二つの層が分かれているというわけでもなく、どちらかというとお取り寄せというニッチな市場が今回マスになって広がって、いろんな層の方が出てきたという印象です。

井本 「お取り寄せをする層」というよりも、お取り寄せ自体がさまざまな層を対象にするようになってきているということですね。そこで思うのは、『人気飲食チェーンの本当のスゴさがわかる本』という稲田さんのご著書です。この本では、大衆的なチェーンを、あえてマニアとして食べるというご提案もされていますよね。また、稲田さんが店舗をプロデュースされる中でも、大衆的な層からマニア的な層まで、さまざまな層をまたいでお店をやっていらっしゃるようにお見受けします。そういった層の違い、分断のようなものはどう見えていらっしゃいますか。

稲田 今回、多くの飲食店が店内での飲食を諦めて一斉に店舗前に机を並べてお弁当を置き始めた時期がありましたよね。でも、そのほとんどのお店のお弁当の値段が500~600円だったんです。要するにコンビニ弁当やオリジン弁当に価格を合わせて、少しでもお客さんを奪おうとしていた。僕は正直それを見て胸が痛むし、腹も立ちました。個人店は、大手のオリジン弁当やコンビニと同じ土俵で戦っても勝てるわけがないんです。その価格帯で個人店が値段以上のものを出すのは、消耗戦でしかない。この風潮は変えなきゃと思っていたころに、今度はうちのお店も、今までやっていなかったテイクアウトを始めることになりました。ある程度は任せるからプランを出して販売するように言うと、やっぱり彼らも500~600円の弁当を出してきたんです。僕はそこですごく慌てました。

 先ほどおっしゃっていた分断という意味では、日々なるべく食費を抑えてなんとか三食しのごうという人に向けてではなく、本当はお店に来たい、そのお店ならではのものを食べたいと心から思っている人たちにアピールするべきだと説得しました。それだったら、お客様が満足するようなものを彼らが必死で考えた結果、3000円になるなら3000円でいい。そのお店でしか得られない喜びを求めている方に、その期待に沿うようなものを提供すればいい、ということを僕は必死に各店に説いてまわりました。
 たとえば、渋谷でやっているマサラダイナーでは、コース料理が1人5000円で食べられるようになっています。ここが営業短縮でほとんどディナー営業できなくなってからは、このコース料理をテイクアウトのパッケージで売り始めました。カレーを600~700円で細々売ってもお客さんがそれほど来てくれるわけではないんですが、高くてもいいからここでしかないものを出した瞬間、テイクアウトのお客様も目に見えて増えたこともありました。

▲エリックサウスマサラダイナー モダンインディアンコースのテイクアウト。(参照

 他にも2000~3000円のお惣菜などもありましたが、正直この値段でも売れるし、SNSで口コミも広がりました。自粛で慎ましやかに生活している中で、たまにそういう華やいだ食卓があることに対して、すごく盛り上がって喜んでくれている実感がありましたね。これは我々にとっても喜びでした。カツカツで安くあげようとしている世界だけで閉じこもってしまうと世界がシュリンクしていくばかりなので、そういう中でもレストランならではの喜びをアピールし続けていかなければいけないんだな、ということを非常に強く感じました。

宇野 お取り寄せやテイクアウトはネット通販などのおかげで地域には縛られていないはずです。にも関わらず、いまだに利用者は東京や情報通の人が多いんですよね。だからけしからんという話ではなく、こういったコロナ禍によって結果的に発見されていった新しい食の楽しみが、どう階層や地域を超えて拡大していけるかが今後の食文化の発展の鍵だと思うんです。そのことが食文化の多様化にもつながっていくし、おそらく危機に瀕している飲食店の生存にもつながっていくと思うんですよね。

稲田 そうですね。カレーをECで販売して感じていることなんですが、カレーは1食あたりだいたい600円前後ぐらいなんです。ネットでエゴサしていると、この価格に対して、正反対の二つの意見を見かけます。一つは、「なんて安いんだ」という反応。もう一つは「すごく贅沢だけどたまには自分へのご褒美に奮発して買います」という反応です。
 これは、たまたまカレー1食600円が両方の層のどちらにもフィットすることができたということだと思うんです。おそらく、両方の層がこのカレーを買う理由やきっかけはまったく違うと思います。そういう、どちらもとれるようなプロダクトの価格帯をつくっていけばいいのか、それともそれぞれに合わせる必要があるのか、正直今は模索している部分ではあります。

井本 稲田さんは、テイクアウトの商品開発の会議の様子をTwitterで投稿されていましたね。本当は広く大衆的に売れるものを考えなきゃいけないんだけど、「食べ物好き」として面白いものを考えたい……という葛藤の過程が興味深いなと思いながら拝見していました。表に出さないところではいろんなご苦労があると思うのですが、層をまたぐバランスは考えるわけですよね?

稲田 そうですね。それはもう癖というか、社風というか。マスにウケるものと狭く深くウケるもの、常に両方のバランスをとりながら、必ずどちらもリリースして、それぞれに力を入れる。どちらかに偏らないのは、宿命のようなものだと思っています。実際にやってる側が楽しいというのもありますが。

「物語」が持つ分断を超える力

井本 エリックサウスは、稲田さんの南インドカレーに対するそれこそマニア的なこだわりと注力によって、「南インドカレーといえばエリックサウス」という確固たる存在になっています。実際にはお店に行ったことがない人にも、いまやしっかりしたイメージができあがっていますね。ですから通販が伸びるというのは、かなり頷けます。稲田さんのマニア的な取り組みが、実店舗という場所性を超えるようなブレイクの一つのきっかけなのかなと思うのですが、宇野さんはどう考えますか。

宇野 今はコロナ禍で外に遊びに行けないから、代わりにちょっとした贅沢としてテイクアウトが流行しているのかもしれません。でも、そのうちどこかに遊びに行くよりも、時間をかけて家族で料理するほうがいいんじゃないかとか、ちょっといいものを取り寄せてアレンジして盛り付けたほうが純粋に「楽しい」んじゃないか、と考えて選ぶ人が増えていく可能性を、このコロナ禍における中食のクローズアップはもたらしたのだと思うんです。

井本 なるほど、この外出自粛で発見された「楽しみ」を、人は今後も手放さない可能性がありますね。粟飯原さんは、今後のお取り寄せの動向をどう予測されていますか。 

粟飯原 長期的な流れとしては、完成品ではなく、最後の仕上げやアレンジを自分で楽しんで作っていくような、過程を楽しむタイプのミールキット的なお取り寄せも伸びていくと思っています。今までのミールキットは忙しい主婦が最後の炒める工程を自分でやることによって、ちゃんと料理を作っているけど少しショートカットしているという気持ちになることのできるものが多かったんですが、最近増えてきているのは、実際のレストランさんが出しているミールキットを買って、レストランの味を自分で再現させるという体験を味わえるものが多いんです。
 あと、コロナ禍でレシピブログでも反響があった企画の一つがパンづくりキットなんですが、手順どおり作れば、自分でもお店に置いてあるようなパンやドーナッツができる、といった手作りの体験やストーリーがセットになっているミールキットがすごく伸びていくと思いますね。

井本 それはおもしろいですね。稲田さんは炊飯器でつくるビリヤニキットを販売して、とても話題になっていた記憶がありますが、あれも体験的なものと言えますね。

稲田 そうですね。生米から家庭の炊飯器で仕上がるビリヤニキットは非常に好評の声を多くいただきました。特に、完成品を盛りつけたものをInstagramで投稿される方が非常に多かったので、そこが喜んでもらえるポイントだろうな、と感じました。
 あとは、ちょうどコロナの直前の2月にレシピ本『南インド料理店総料理長が教える だいたい15分! 本格インドカレー』を出版したんですが、これは「3ステップ15分で誰でも本格的なインドカレーが簡単に作れますよ」というハードルの低さをコンセプトにしたこともあって、エゴサをしてみると、ある時期からレシピ本を見て作ったものを店顔負けにキレイに盛りつけた写真の投稿が爆発的に増えたんです。

『南インド料理店総料理長が教える だいたい15分!本格インドカレー』

 大雑把なくくりになるかもしれませんが、みんな外食で奪われた楽しみを他のことで埋め合わせをしようとしているように感じました。

粟飯原 稲田さんのレシピ公開のタイミングがすごく良かったと思うんですけど。

稲田 あれはたまたまですけどね。本当にいいタイミングで。

粟飯原 ちょっとずれてしまうかもしれないんですが、今回コロナの中で非常に支持された店舗さんには、普段は門外不出のレシピをあえて公開するお店が多かったように思います。わたしが知っている中には、普段はなかなか買えない予約制のチーズケーキ屋さんが「買えない人はもう自宅で作っちゃってください」ということでレシピを公開していらっしゃいました。先ほど言っていた分断を消してしまったんですね。もちろん、それを見て自分でつくってその味に近づける人もいれば、「こんなに手間がかかるんだったら自分で買っちゃって食べよう」と購入する人もいて、ふたつの層が両方楽しめるようなかたちになっていたのが印象的でした。
 ディズニーランドさんもチュロスのレシピを公開されて、「ディズニーランドのチュロスをお家でも味わえる!」ということで、みんな喜んで作っていましたよね。そう考えると、あえてレシピを公開してしまって、買いたくても買えない人はそのレシピを見てつくる一方で、自分は買ってしまったほうが早いな、と感じた人は買ってしまうという流れも、もしかしたらできてくるかもしれないですね。逆に消費者からすると、自分が作った味とお店の味のどこが違うのか、両方食べ比べてみる楽しみも広がりますよね。

稲田 たしかに、僕のレシピ本を見てつくってくれた人の投稿には「落ち着いたら実際のお店にも食べに行きたい」といったコメントが高確率でついていたので、そこは相反するものではなくて、自然とつながることだと思いますね。

粟飯原 そうですね。あと、今は料理教室が変化しているんです。料理教室はもともと先生のお宅でやる場合が多いんですが、先生がデモンストレーションをしてみせて、みんながそれを見ながらちょっとだけ参加をして、できあがったものを食べるかたちが多かったんです。
 それが今回のコロナ禍で、ZoomやInstagramライブで料理教室をする方が非常に増えてきました。中でも、みんな同じ材料を用意してキッチンからネットをつなげて一緒に作っていきましょう、というスタイルの料理教室は参加満足度も高いようです。先生の手順を見ながら自分の手順も一緒にやってみて、できあがったときに一緒にそれぞれのキッチンから食べることができる。これなら北海道でも九州でも全員で一緒につくる体験を味わえるんです。

コト消費としての「食」が持つ可能性

宇野 「食」って、「モノ」と「コト」の両方の側面があると思うんです。たとえば、今までは大人が遊ぶと言ったら8割がた外食のことを指していたと思うんですが、あれは店の雰囲気や内装も含めて体験にお金を払っているわけですよね。
 ところが、今回のコロナ禍で伸びたテイクアウトやデリバリーによる「中食」文化は、この「モノ」と「コト」とのバランスを大きく変えてしまっているように思うわけです。
 たとえば、僕みたいな気取ったお店が苦手な人は、実はテイクアウトやデリバリーのほうが気楽に利用できる。僕は新宿や渋谷の駅前のような繁華街がそもそも苦手だし、青山や代官山のような場所もできれば近寄りたくない。服装についても、できればジャケットなんか一生着たくない。そういった人間にとって、実は有名店の「コト」消費の側面は、結構ハードルに感じるというか、ぶっちゃけあまり趣味に合わない雰囲気の中で食事をしても美味しくないわけです。だから店で「コト」も含めて食べるよりも自宅で「モノ」だけを食べるほうがいな、と思えることが多かったのは事実です。
 こういうことを言うと何言っているんだ、お店の雰囲気や街の文脈も合わせて飲食文化なのだとお説教して気持ちよくなりたがる人もきっと多いと思うけれど、僕が指摘したいのはもうちょっと別のことで、これは客の敷居を下げていると同時に良くも悪くも料理という「モノ」そのものの力が丸裸にされる瞬間であるということです。
 そしてもう一つは、一見いま指摘したことと相反するのだけど、中食には外食、つまりお店とはまた違った体験の演出が求められるということです。つまり、逆に中食ならではの「コト」としての面白さが生まれているし、それが求められてもいる。料理というモノ自体の完成度は高いけれど客が手を加える余地がないものよりも、モノ自体は劣っていても未完成品に手を加える楽しみがあるほうが、総合的な満足度が高いなんてことは当然あり得るわけですから。
 今回のコロナ禍で外食ができなくなった結果、ちょっと自分でアレンジしてみるとか、自分で工夫して盛り付けてみるとか、公開されたレシピで自分で作ってみるとか、自分が手を動かして加えてみるようなところ、つまり「コト」消費に、体験としての食の快楽の源泉が移ったんだと思うんです。中食の文化が豊かになっていくためには、モノを良くしていくだけじゃだめなんですね。

粟飯原 そうですね。食事のコトの側面で言うと、今回のコロナ禍を経てコミュニケーションとしての夕食という体験が変わった人が多いと思います。特に家族がいる方は、中食がコミュニケーションのきっかけになった方も多いのではないでしょうか。
 ユーザーアンケートを実施して面白かったのは、コロナ流行の前後で、夕食を食べ始める時間が変わっていたことでした。コロナ禍が起きる前は、おそらく残業などで一定の人たちは21時台から夜ご飯を食べていたんですが、起きた後では、16時~17時台から家族と一緒に食べ始める人たちが増えているんです。
 これは夕食の時間が早くなったことで食事に割く時間が長くなり、家族とのコミュニケーションがより活発化したデータとして読み取れるのかなと思っています。「コロナが終わった後、夕食のスタイルを元に戻したいですか? 」と聞いたら、2割の人が「戻したくない」と回答していました。「こんなに家族でゆっくりご飯食べたの初めてです」といったコメントもありました。多くの人にとっていい体験だったんだと思うんですよね。

井本 なるほど。外食で失われた体験を補うという意味では、稲田さんのお店では、カレー文化にまつわる情報をすごく発信されていますよね。

稲田 まさにコトの象徴にかかる部分だと思うんですが、単に食べるのではなくて、食べるものにまつわる歴史的、あるいは文化的な豊穣なストーリーをお客様に伝えるという部分では、実は外食よりも中食のほうがやりやすかったりする側面があると思うんです。たとえば中食に一つ手を加えて盛りつけるにしても、ベースとなる物語に則した盛り付けや仕上げがある。
 たかが食べ物一つかもしれないけど、実はそこにはすごく重層的な物語があるんです。それを消費者一人ひとりがいろんな角度から掘ってその成果をSNSで共有することで、さまざまな解釈が生まれる。お店で出すと一面的なものにもなりがちなので、作り手が思っていなかったような楽しみ方をどうやって発見してもらえるのか楽しみですし、多様性というと安っぽいかもしれないけど、より拡がりが生まれますよね。

井本 ですから、『南インド料理店総料理長が教える だいたい15分! 本格インドカレー』って、基本的には、すごくハードルの低いところから入る本なんです。その通りにすれば簡単に美味しくつくることのできるレシピが並んでいる。ところが、これが素晴らしいんですけど、最後の最後のページに、カレーの本質をつくような原理みたいなものを稲田さんは付けてるんですよ。「手軽に見えるこの本のカレーのレシピは、この原理からできていますよ」っていう。それで、「さぁ、ここは沼の入り口です」って書いてあるんです(笑)。この原理を入り口に、それぞれのマニアの道を進んでくださいという。

宇野 それ、俺も買おう。

井本 まさにそういった情報やストーリーを付与していくことによって、消費者がより対象に体験的に関わっていくきっかけを作りだしているのが、この最後のページだと言えると思うんです。

宇野 今の稲田さんのお話を聞いて思ったんですが、インスタ映えについて考えることも重要だと思うんです。この10年はとにかくSNSで人間をリアル空間に動員していた時代でしたが、その行き着いた先がインスタ映えです。あれはみんな同じ店に行って、同じメニューを頼んで、同じ角度で撮って、ハッシュタグをつけて、飲食店的には助かっていたのかもしれないけれど、あきらかに食文化の画一化を呼んでいたと思うんです。
 それに対して今回の中食ブームでは、「どのように食べるか、どのようなコトにするかはあなたがた次第です」とボールを渡すゲームができる。もちろん、彼ら彼女らはその写真をInstagramに上げるけれど、明らかにハッシュタグに投稿される内容は多様化すると思う。これがけっこう大事だと思うんです。

粟飯原 私たちは「フーディーテーブル」という日本最大級の料理インスタグラマーグラムコミュニティを運営していますが、最近はInstagramがよりコミュニケーション重視の方向に舵を切ったことを強く感じています。この変化は、トレンドが変わったからInstagramが仕様を変えたということと、Instagramが仕様を変えたからトレンドが変わったということが入れ子で起きています。
 Instagramの仕様変更で、昨年の後半から「いいね!」数が非表示になったことで、保存数がキーアクションの一つになってきています。つまり、タイムラインや発見タブにレコメンドで出されるものは「いいね!」数が多いものから保存数が多いものに移ってきているということですね。「いいね!」する投稿と保存する投稿はちょっと違っていて、自分の知恵として役立つもののほうが保存されやすくなってきている。料理でいったらレシピがちゃんと書いてあるか、盛り付けのコツが載っているとか、具体的で自分の料理の参考になる、といったものです。
 あとは、ストーリーズが大きく伸びていることもかなり大きいですね。ストーリーズは「映え」よりは、コトで心が動いたことをエンタメ的にショットするというかたちになっているので、よりコト消費に寄っているように感じます。もはやタイムラインは本当に記念すべきものを上げるだけの場所になって、頻繁にストーリーズの更新をするようになりました。
 さらに今年からInstagramはショッピングの機能を強化していくということなので、Instagram上でのコト消費がさらに増えて、外食の通販も今後さらに伸びていく気がしています。
 もう一つの重要な盛り上がりはインスタライブですね。料理の世界でもすごく流行っていて「今日21時ぐらいから配信しまーす」と言って、ゆるく配信しているケースが多い。お酒を飲みながら料理して、ときどき視聴者の質問に答える、といった雰囲気です。そこにはライブに一緒に行った仲間がみんなで居酒屋ごはんを食べてるような感覚が生まれるんですよね。まさに料理を介して新しいコミュニティが形成されていて、よりコト消費ですよね。

宇野 Instagramの主戦場がタイムラインからストーリーズに変化したことによってコト消費がより先鋭化していくということですね。それはInstagramでウケるように特化しろという話ではなく、食べるという文化を、もう少しコトの次元で考えなきゃいけない時代になったということだと思うんです。
 そのとき、送り手は受け手を半分信用して、半分信用しないということがポイントになってくる気がするんですよね。一時期のInstagramがそうであったかのように、より多くの人が発信能力を持つと、逆に画一化してしまう。もうちょっとユーザーに想像力を持ってもらうとか、より深く楽しんでもらうために送り手の側がどういう工夫ができるのかを考えることが、送り手側の要になるのだと思うんです。

「飲まない東京」と、五感の体験としての外食の再発見

井本 最後に、今後の見通しについて、みなさんの展望をうかがえますか。

粟飯原 そうですね。多くの人が今回のコロナ禍で一回味わった楽しさを忘れないと思うんです。アフターコロナになっても「また久々にみんなでZoom飲みしようよ」「家で餃子つくるって、こんな楽しかったんだ。やってみようよ」といった流れになる可能性は十分にある。そのとき遊び領域としての食はすごく伸びて、今後もっとおもしろくなるんじゃないかなと思っています。
 お取り寄せについては、今回は自分用にお取り寄せした人がすごく多かったと思うんですね。でも、たとえば「おうちにエリックサウスのカレーが届くと、こんなにおもしろいんだ!」と実感した人の次のステップは、ギフトだと思うんです。「自分が食べておいしかったから、今度何かあったときにこれを贈ってあげよう」とか。自分が体験したものをほかの人にも体験して欲しいという考えが、長期的には次の展開として出てくるんじゃないかなと思っています。

井本 ありがとうございます。稲田さん、いかがですか。

稲田 コロナ以前から飲食業界全体のトレンドとして、「宴会離れ」や「一人客」がキーワードとなっています。たとえば、会社で宴会をしない代わりに、こぢんまりと仲間内で集まるようになりましたし、居酒屋のカウンターに座って、お店の人や常連さんと会話しながらという一人客ではなく、あくまで壁際の自分一人の世界で、純粋に料理を楽しむといったタイプの一人客が増えました。
 全体として、こういった「個の時代」が今回のコロナで一気に加速したなという実感があります。一人ひとりがコトに対する楽しみというものをそれぞれの楽しみとして享受する時代になった今、発信する側としては、プロダクトや楽しみ方のストーリーも、いろんな情報とモノを提供していって、それを一人ひとりに選んでもらうような発信の仕方も求められますよね。
 あと、一昔前だったら多品種少量生産は効率が悪いと言われていましたが、今は、通販やネットなどを越えて商圏は無限に存在します。世の中に一握りしかニーズがないようなものでも、実は発信していく価値が出てくる。そういう発信を楽しんでいけたらなと思っています。

井本 ありがとうございます。余談になってしまうんですが、いま稲田さんがおっしゃった飲食店におけるアルコールのお話はおもしろいですね。宇野さんは普段からお酒を飲まない人で、東京で夜アルコール抜きで遊ぶ「飲まない東京」というコンセプトをよく語られていますが、今後その話もぜひ聞いてみたいですね。

宇野 そうですね。僕は普段はお酒を飲まないんですが、そうなると、夜に外食するのが嫌いになっちゃうんですよ。まず、お酒を飲みながら食べることが前提で出てくるから、コース料理が嫌い。居酒屋もお酒でテンションが上がっている人に特化された空間で、しらふの人にすごく居づらいので大嫌い。昔はよく付き合いで飲み会にも顔を出していたんですが、いろいろ思うところがあって7、8年くらい前にやめたんです。そして一度「飲む」のをやめてみると、かなり世の中の見え方が変わったと思っているんですよ。
 たとえば、東京は24時間遊ぶことができるのが街の魅力だと僕は思っているのですが、そのほとんどが「お酒」が前提のものになっていて、それがとても惜しいと思うんですよね。そのために、実は夜の「遊び」のバリエーションがそれほどない。だから僕は、数年前から「飲まない東京」というコンセプトを立てて、お酒抜きの夜の「遊び」をいろいろ試しているんです。ここにいる井本さんにプロデュースしてもらって、夜通し三浦半島を横断するハイキングを企画してみたりとか、あえて都心でカブトムシを探したりとかしています。
 飲食に話を戻すと、僕は端的にみんなデフレ居酒屋に3時間いて3000円とか4000円とか使っている、あの虚しさにもっと気づくべきだと思うんです。
 今回は中食でお取り寄せやテイクアウトを改めてやってみて、多くの人が3000〜4000円あったらこれだけおいしいものを食べられるということに気づいたはずなんです。「外でお酒を飲む」というだけで、時間的にも価格的にもめっちゃコスパ悪くなっていて、しかも、実は味わい方も制限されている。この制約が外れて、もうちょっとゼロベースで「食べる」という体験に向き合えたことが一番大きいポイントだと思っています。

井本 そうですね。ちなみに僕は完全に酒飲み派なんですけど、それでも、酒なしの食体験の再設計というのは、チャレンジングでおもしろいと思います。その選択肢としての中食というのは、ありそうですね。

粟飯原 そうですね。でも私は自粛が明けて、やはり外食の素晴らしさもすごく感じたんです。自粛期間中はほぼ三食自炊していたんですが、自粛が明けたこの土曜日に、久々に銀座に行って木村屋でエビカツサンド食べたんです。震えるほど感動して、めっちゃ店員さんに熱く語ってしまって(笑)。
 やっぱり、どんなにおいしく自炊して作ったつもりでも、プロの味をそのお店で食べている幸福感に勝るものはないな、ということも思いました。こういった喜びを、今、街に出て改めて感じる人も多いんじゃないかな。体験を提供できる外食産業は、今後スペシャルな産業になっていくとも思います。

宇野 それもすごくよくわかります。僕も営業再開したら行きたいお店、正直、たくさんあります。

井本 私たちが外食で何を食べていたのかということを、もう一度考えさせられます。お三方、今日はお話をありがとうございました。

[了]

この記事は石堂実花が構成し、2020年7月9日に公開しました。
Banner Photo By Kostiantyn Postumitenko / PIXTA(ピクスタ)
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