石岡美術館 #01 ロンドン・ナショナル・ギャラリー展

感染対策モードも行き渡り、多くの魅力的な美術展が再開されていますが、やはりこのご時世、ついつい足が遠のいてしまいがち。そんなあなたのために、古今東西の視覚文化のスペシャリストである批評家・石岡良治さんが、注目の展覧会を巡って音声＆動画でディープに解説する新企画がスタートします。その名も「石岡美術館」。記念すべき初回は、国立西洋美術館で開催の「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」です。

「石岡美術館」のこれまでの連載記事は、こちらにまとまっています。よかったら、読んでみてください。

端的に言うとね。

イヤホンの準備はできましたか？　それでは、↓のガイド音声or動画本編をお楽しみください！

▲美術館のイヤホンガイド気分でページを眺めながら楽しみたい方は、上のバーから音声版の再生を。石岡さんの解説に集中したい方は、下の動画版をご視聴ください。

石岡美術館、始めました。

　批評家の石岡良治さんは、早稲田大学で教鞭をとりながら、古今東西さまざまな表象文化を研究されています。その守備範囲は西洋美術史から、古今東西の映画、現在放映中のアニメなど、非常に多岐にわたります。
　「石岡美術館」は、そんな石岡さんと一緒にさまざまなジャンルの美術展をまわりながら、展示作品の解説を音声＆動画でガイドしていただく、とっても贅沢な企画です。PLANETSのメルマガでも、2018年には「マイク・ケリー展　デイ・イズ・ダーン」といった展覧会をナビゲートしていただきました。

　さて、「遅いインターネット」での記念すべき初回は、2020年6月18日から10月18日まで東京・上野の国立西洋美術館で開催の「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」。直球王道の近代美術展からスタートします。

▲ロンドン・ナショナル・ギャラリー展公式HP

　ロンドン・ナショナル・ギャラリーは、イギリス、ロンドンのトラファルガー広場に面して建つ美術館で、ヨーロッパにある多くの国立美術館とは異なり、王室による収集ではなく、市民の力で収集された作品が多いのが特徴だそうです。今回の展示は、本国館外で開催される収蔵作品の展覧会としては世界初で、日本初上陸の作品も多数来日しています。

▲国立西洋美術館外観。現在は新型コロナウイルス感染拡大のため、事前予約制となっています。

▲国立西洋美術展入り口にて。「今回の推しはこの絵画なんですね〜（石岡さん）」

▲展示途中のフォトスポットにて、1枚。展示の目玉でもあるゴッホのひまわりとともに、ピース！

▲鑑賞後、ミュージアムショップで販売していた『すみっコぐらし』×ロンドン・ナショナル・ギャラリー展のコラボのてのりぬいぐるみを手に取る石岡さん。

▲『すみっコぐらし』コラボのてのりぬいぐるみ、レンブラントに扮したとんかつと、ドガの描く踊り子に扮したとかげ。この日はほとんどのキャラが売り切れで、石岡さんが手に取ったとかげは最後の1体でした！

　収録当日は編集部も石岡さんの小声解説を聞きながら一緒に展示をまわりましたが、「こんな楽しみ方があるのか！」と目からウロコが何枚も落ちました。伝統的な西洋絵画というと「宗教的な背景がわからないと楽しめなさそうだな……」と少し尻込みしがちですが、まったくそんなことはありません。

　石岡さんが解説している作品リストも下記にピックアップしていますので、適宜参照しながら、引きつづきガイド音声をお楽しみください！

ガイド内で取り上げた展示作品一覧

■レンブラント・ハルメンスゾーン・ファン・レイン《34歳の自画像》
Rembrandt van Rijn
Self Portrait at the Age of 34
音声16:51〜／動画17:36〜

■トマス・ゲインズバラ《ウィリアムハレット夫妻、朝の散歩》
Thomas Gainsborough
Mr and Mrs William Hallett (The Morning Walk)
音声18:41〜／動画19:26〜
※今回の展覧会になし

■ジョージ・スタッブス《ミルバング家とメルバーン家の人々》
George Stubbs
The Milbanke and Melbourne Families
音声19:38〜／動画20:23〜

■フィンセント・ファン・ゴッホ《ひまわり》
Vincent van Gogh
Sunflowers
音声21:46〜／動画22:31〜

■ポール・ゴーガン《花瓶の花》
Paul Gauguin
A Vase of Flowers
音声23:37〜／動画24:22〜

■アンリ・ファンタン=ラトゥール《ばらの籠》
Ignace-Henri-Théodore Fantin-Latour
A Basket of Roses
音声24:13〜／動画24:58〜

■ヨハネス・フェルメール《ヴァージナルの前に座る若い女性》
Johannes Vermeer
A Young Woman seated at a Virginal
音声27:36〜／動画28:21〜

■アンソニー・ヴァン・ダイク《レディ・エリザベス・シンベビーとアンドーヴァー子爵夫人ドロシー》
Anthony van Dyck
Lady Elizabeth Thimbelby and Dorothy, Viscountess Andover
音声31:26〜／動画32:11〜

■ジョシュア・レノルズ《レディ・コーバーンと3人の息子》
Sir Joshua Reynolds
Lady Cockburn and her Three Eldest Sons
音声36:25〜／動画37:10〜

■トマス・ゲインズバラ《シドンズ夫人》
Thomas Gainsborough
Mrs Siddons
音声36:31〜／動画37:16〜

■ハンス・ホルバイン《大使たち》
Hans Holbein the Younger
Jean de Dinteville and Georges de Selve (‘The Ambassadors’)
音声38:15〜／動画39:00〜
※今回の展覧会になし

■ウィリアム・ホガース《当世風結婚》
William Hogarth
Marriage A-la-Mode: 1, The Marriage Settlement
音声41:43〜／動画42:28〜
※今回の展覧会になし

■パオロ・ウッチェロ《聖ゲオルギウスと竜》
Paolo Uccello
Saint George and the Dragon
音声51:43〜／動画52:28〜

■カルロ・クリヴェッリ《聖エミディウスを伴う受胎告知》
Carlo Crivelli
The Annunciation, with Saint Emidius
音声52:39〜／動画53:24〜

■ドメニコ・ギルランダイオ《聖母子》
Domenico Ghirlandaio
The Virgin and Child
音声54:46〜／動画55:31〜

■ティツィアーノ・ヴェチェッリオ《ノリ・メ・タンゲレ》
Tiziano Vecellio
Noli me Tangere
音声55:12〜／動画55:57〜

■ジョヴァンニ・ジローラモ・サヴォルド《マグダラのマリア》
Giovanni Girolamo Savoldo
Mary Magdalene
音声56:16〜／動画57:01〜

■カナレット《ヴェネツィア：大運河のレガッタ》
Canaletto
Venice: A Regatta on the Grand Canal
音声1:04:56〜／動画1:05:41〜

■フランチェスコ・グアルディ《ヴェネツィア：サン・マルコ広場》
Francesco Guardi
Venice: Piazza San Marco
音声1:04:56〜／動画1:05:41〜

■ニコラ・プッサン《泉で足を洗う男のいる風景》
Nicolas Poussin
Landscape with a man washing his Feet at a Fountain
音声1:06:32〜／動画1:07:17〜

■クロード・ロラン《海港》
Claude Lorrain　
A Seaport
音声1:03:45〜・1:06:32〜／動画1:04:30〜・1:07:17〜

■アルベルト・カイプ《羊飼いに話しかける馬上の男のいる丘陵風景》
Aelbert Cuyp
A Hilly River Landscape with a Horseman talking to a Shepherdess
Short title: A Hilly Landscape with Figures
音声1:08:57〜／動画1:09:42〜

■ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー《ポリュフェモスを嘲るオデュッセウス》
Joseph Mallord William Turner
Ulysses deriding Polyphemus- Homer’s Odyssey
音声1:10:22〜／動画1:11:07〜

■ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー《雨、蒸気、速度》
Joseph Mallord William Turner
Rain, Steam, and Speed – The Great Western Railway
音声1:11:49〜／動画1:12:34〜
※今回の展示になし

（出典）

■フランシスコ・デ・スルバラン《アンティオキアの聖マルガリータ》
Francisco de Zurbarán
Saint Margaret of Antioch
音声1:14:48〜／動画1:15:33〜

■バルトロメ・エステバン・ムリーリョ《幼い洗礼者聖ヨハネと子羊》
Bartolomé Esteban Murillo
The Infant Saint John with the Lamb
音声1:19:25〜／動画1:20:10〜

■ディエゴ･ベラスケス《マルタとマリアの家のキリスト》
Diego Velázquez
Kitchen Scene with Christ in the House of Martha and Mary
Short title: Christ in the House of Martha and Mary
音声1:19:53〜／動画1:20:38〜

■エル・グレコ《神殿から商人を追い払うキリスト》
El Greco
Christ driving the Traders from the Temple
音声1:21:33〜／動画1:22:18〜

■エドガー・ドガ《バレエの踊り子》
Hilaire-Germain-Edgar Degas
Ballet Dancers
音声1:22:11〜／動画1:22:56〜

■フアン・バウティスタ・マルティネス・デル・マーソ《喪服姿のスペイン王妃マリアナ》
Juan Bautista Martínez del Mazo
Queen Mariana of Spain in Mourning
音声1:22:55〜／動画1:23:40〜

■ジョン・コンスタブル《コルオートン・ホールのレイノルズ記念碑》
John Constable
Cenotaph to the Memory of Sir Joshua Reynolds, erected in the grounds of Coleorton Hall, Leicestershire by the late Sir George Beaumont, Bt.
Short title: Cenotaph to the Memory of Sir Joshua Reynolds
音声1:24:13〜／動画1:24:58〜

■ジャン=オーギュスト=ドミニク・アングル《アンジェリカを救うルッジェーロ》
Jean-Auguste-Dominique Ingres
Angelica saved by Ruggiero
音声1:28:38〜／動画1:29:23〜

■ヤコポ・ティントレット《天の川の起源》
Jacopo Tintoretto
The Origin of the Milky Way
音声1:29:22〜／動画1:30:07〜

■バルトロメ・エステバン・ムリーリョ《窓枠に身を乗り出した農民の少年》
Bartolomé Esteban Murillo
A Peasant Boy leaning on a Sill
音声1:33:02〜／動画1:33:47〜

ガイド内で言及した書籍一覧

■古賀太『美術展の不都合な真実』（2020年、新潮社）

フェルメール、ゴッホ、モネ―屈指の名画が来日するのは、有数の芸術愛好国だから?　否、マスコミが主導し、大宣伝のなか開幕する「美術展ビジネス」が大金を生むからだ。新聞社の事業部で美術展を企画した著者が裏事情を解説。本当に観るべき展示を見極める目を養う必読ガイド。

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■サイモン・ウイルソン『イギリス美術史』（2001年、岩崎美術社）

ブレイク、ターナー、コンスタブル、ラファエル前派、ビアズリー、ポップ・アート……。絵画・彫刻・工芸など、幅広い芸術分野でイギリスが歩んだ道。現代イギリスを代表する美術史家が語る、イギリス美術の魅力。

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■岡田温司『グランドツアー――18世紀イタリアへの旅』（2010年、岩波書店）

折しもポンペイ遺跡発見の世紀、ヨーロッパじゅうの知識人や芸術家たちが、こぞって馬車にゆられてアルプスを越え、イタリア半島を目指した。そこで彼らを魅了した、人、自然、遺跡、芸術とは？　ゲーテやサドも書き残した当時の旅を追体験しつつ、人々の交錯のなかで芽吹き始めていた新しい感性を活写する。貴重な図版を多数収録。

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■大髙保二郎、久米順子、松原典子、豊田唯、松田健児『スペイン美術史入門　積層する美と歴史の物語』（2018年、NHK出版）

先史時代のアルタミラ洞窟壁画から、ローマ時代、イスラームとレコンキスタの時代、絶対王政の時代を経て、ナポレオン支配とスペイン内戦、そして“ゲルニカ”の帰還まで。スペインという国の歴史をたどりつつ、時代時代の美術の特質を浮き彫りにする。

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▲石岡さん、収録お疲れさまでした！

［了］

この記事は、石堂実花が執筆を、岡庭正利が音声・動画編集をつとめ、2020年9月24日に公開しました。
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