イヤホンの準備はできましたか? それでは、↓のガイド音声or動画本編をお楽しみください!

▲美術館のイヤホンガイド気分でページを眺めながら楽しみたい方は、上のバーから音声版の再生を。石岡さんの解説に集中したい方は、下の動画版をご視聴ください。

いざ、国立新美術館へ!

 石岡美術館は、古今東西さまざまな表象文化を研究されている批評家・石岡良治さんとPLANETS編集部がさまざまなジャンルの美術展をめぐり、展示作品の解説を音声&動画でガイドしていただく企画です。
 直球の西洋絵画展だった前回の「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」から一転、今回取り上げるのは、国立新美術館で2020年8月12日から11月3日まで開催の「MANGA都市TOKYO」展です。

 この展覧会は、2018年にパリのラ・ヴィレットで3万人を超える観客を動員した大規模展覧会「MANGA⇔TOKYO」の日本凱旋展です。企画・運営は国立新美術館、ゲストキュレーターに明治大学国際日本学部教授の森川嘉一郎氏を迎え、500を超えるマンガ・アニメ・ゲーム・特撮の原画や映像、資料やインスタレーションによって、「東京」という都市とフィクションとの密接な関係を明らかにする展覧会となっています。

 加えて、本展は東京オリンピック・パラリンピックを契機とする「日本博」の一環でもあるので、東京にやってくるはずだった外国人観光客に向けた日本文化ガイドとしての性格も強く感じられる展示構成になっているのが特徴的です。
 まず、会場に入って最初に出迎えてくれるのは、この展覧会のナビゲーター・ヨリコと鳥のヴィッピー。キャラクターデザインはスタジオTRIGGERのアニメーター・吉成曜さんです。

▲「やっぱりわたしは鳥に目がいってしまいますね〜」と石岡さん。

 

 入口近くのイントロダクションを通り抜けると、《1/1000巨大東京都市模型》が目の前に広がります。

▲ちょうど上映されていた『機動警察パトレイバー2 the Movie』。模型はちょうど爆破された橋にスポットライトが当たっています。

 

▲東京スカイツリーはその高さもきっちり再現されており、ひときわ目立っています。

 

▲東京都庁とその周辺の高層ビル群。『残響のテロル』の爆破シーンが流れるとスポットライトが当たります。

 幅約17メートル、奥行き約22メートルで東京湾を中心に広がるミニ東京は圧巻です! 前方のスクリーンには東京の各地を舞台としたアニメーションの映像が上映され、連動して、該当地域の模型にスポットライトが当てられます。

 展示はこの模型をぐるりと取り囲むようにして、3部構成となっています。
 第1セクションのテーマは「破壊と復興の反復」。主に『ゴジラ』や『AKIRA』、『エヴァンゲリオン』など都市破壊のスペクタクルや、『千年女優』『帝都物語』『火要鎮』など、天災とそこからの復興を描いてきた映像作品が取り上げられています。
 第2セクションは「東京の日常」。『百日紅』『はいからさんが通る』『リバーズ・エッジ』など、主に「東京」の風景・情景が描いてきた文芸的なマンガ作品の原画を中心に、江戸時代から現代に至るまでの歴史を辿りながら、モデルとなった場所の地図と併せて展示することで、東京の「日常」の変化を追っていきます。
 最後のセクションのテーマは「キャラクター vs. 都市」。アニメやマンガ、ゲームなどで表象されてきた「現実の都市」が、逆にキャラクターによって侵食されていく現象を、さまざまなグッズの実物展示によって浮き彫りにするというユニークなセクションです。「初音ミク」とコラボしたコンビニエンスストアや、アニメ『ラブライブ!』のラッピング電車、安全太郎など、大型のインスタレーションが目を引きます。

▲アニメ『ラブライブ!』ラッピング電車の車内が展示会場に。行き先は「国際展示場駅」。つり革につかまる男性は穂乃果推しの模様。

 こうした一連の展示を通して、風景、時間、空間などのアプローチから新たな「東京」像が立体的に浮かび上がる展示構成となっています。この展覧会場を後にしてから眺める「東京」の景色は、それまでとはまた違った色を帯びて見えるかもしれません。
 
 冒頭から最後まで、展示の順番からその展示方法まで、細かく見逃すことなくじっくり回りました。「ここにこの作品を持ってくるんですね(苦笑)」「あの作品がない! と思ったらきちんとありましたね!」……などなど、石岡さんの解説を聞きながら一緒に展示を巡ると、個々の展示作品たちが大きな文脈を持って見えてきて、とても貴重な体験でした!

 それでは引き続き、石岡さんによるディープなガイド音声をお楽しみください。

ガイド内で取り上げた作品一覧

「MANGA都市TOKYO」作品リストはこちらから。

ガイド内で言及した書籍一覧

「MANGA都市TOKYO ニッポンのマンガ・アニメ・ゲーム・特撮2020」コンセプト・ブック(2020年、国立新美術館)

石岡良治『現代アニメ「超」講義』(2019年、PLANETS)

中沢新一『アースダイバー』(2005年、講談社)

[了]

この記事は、石堂実花が執筆を、岡庭正利が音声・動画編集をつとめ、2020年10月22日に公開しました。
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