「庭プロジェクト」とは、これからのまちづくりについて、建築から人類学まで、ケアから哲学までさまざまな分野のプロフェッショナルが、官民産学を問わず集まって知恵を出し合う研究会です。
第13回の研究会では、前回行った鎌倉視察(分断を生まない「市民参加」はいかにして可能か──「鎌倉」のスマートシティ政策から考える)に続いて、鎌倉市スマートシティ推進担当参与の加治慶光さんをゲストに迎えました。この記事では、鎌倉市のスマートシティ構想に関する加治さんからのご紹介、それを踏まえて行われたディスカッションの内容をお届けします。
端的に言うとね。
“ブラウンフィールド”と“グリーンフィールド”を循環させる
加治慶光さんは、金融からメーカー、映画や自動車まで、さまざまな業界のリーディングカンパニーで主に宣伝・マーケティング領域で実績を重ねたのち、近年ではAIを主な専門領域として官民問わずデジタル化のプロジェクトに携わっています。そんな中で、会津若松などのスマートシティにも携わるようになり、鎌倉市スマートシティ推進担当参与として鎌倉市にも関わるようになりました。
鎌倉市ではビジョンとして掲げる「世界に誇れる持続可能なまち」「誰もが生涯にわたって自分らしく安心して暮らすことができる共生社会」の実現をより一層力強く進めていくため、スマートシティの取り組みを推進しており、2022年3月にその取組の基本的な考え方や方向性を「鎌倉市スマートシティ構想」として取りまとめました。「人口減少と高齢化」「気候変動と災害激甚化」「観光交通の適正化」という3つの課題の解決を目指すこの構想のもとで、現在は市民との対話プロジェクトを重視しながら、特に今ここにある危機である人口減少を勘案し、関係人口や交流人口も視野にいれて複数のプロジェクトが進んでいる様子です。
「以下の図をご覧いただくとわかるように、鎌倉の旧市街地区から大船地区にかけては既に街ができ上がっている地域で、私たちは“ブラウンフィールド”と呼んでいます。それに対して深沢地区というのは、未利用地を多く含む地域であり、“グリーンフィールド”と呼んでいるんです。
この2つは一般には異なる概念ですが、鎌倉市のスマートシティ構想では、両者を循環させることを目指す『未来への循環』を掲げています。ブラウンフィールドで発生した課題をグリーンフィールドで解決し、さらにグリーンフィールドで実験したものをブラウンフィールドに還元する、という構想です」(加治さん)
庭プロジェクトにおいても、関連プロジェクトを分析するうちに、「鎌倉市深沢地区まちづくりガイドライン」という別のプロジェクトが進行していることもわかりました。現在は「交流がうまれるまち」「生命にやさしいまち」「歩きたくなるまち」「水と緑に囲まれたまち」という4つの指針を掲げ、深沢地区のまちづくりが進んでいます。鎌倉市ホームページを見ると、例えば地区の真ん中にシンボル道路を通して、新庁舎をつくっていく計画を進めているといいます。
この市役所移転に関しては、「鎌倉市新庁舎等整備基本計画」というプロジェクトが進んでいるとのこと。この移転と関連して「鎌倉市新庁舎等基本設計及びDX支援業務委託の企画提案の選定について」という構想があり、この基本設計の業者候補と議論しながら、今後は一般の人たちともパブリックコメントをやりとりして方針を詰めていくとの記述を見ることができます。これは複数の計画が平行して進んでいることとして理解できます。
さらに周辺地域に視線を拡げると、隣接する藤沢市が推進する、2018年にできた「村岡・深沢地区の総合交通戦略」という計画も進んでいることがわかりました。以下の図のように、東海道本線の大船駅と湘南モノレール・湘南藤沢駅の間に「深沢新駅」を2032年に開設予定だといいます。
「モザイク的な住民層」という問題
ここまでの加治さんによる鎌倉市スマートシティ構想の紹介、そして前回の視察内容を踏まえ、ボードメンバーをはじめ参加者とのディスカッションが行われました。まずは慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスに所属する研究者として、自身も近接地域のまちづくりに藤沢市側で関わっているという井庭崇さんがコメントしました。
「藤沢市のまちづくりのコンセプトに関する有識者会議に僕もお声がけされ参加しているのですが、この地域については、藤沢市側と鎌倉市側がいっそう協調していくことが不可欠だと思います。この地域は2つの市をまたいでいて、それぞれに別の鉄道が入ってきています。つまり、鎌倉市管轄か藤沢市管轄かは、自然地理的なまとまりではなく、いわば『人工的』なものです。ですので、それぞれの考えや背景はあるとは思いますが、『不自然』な区分を超えて、連携して地域を育てていくのが大切だと思います。
藤沢市側の地域(村岡新駅周辺)では、”創造”を生み出す街ということで、くらし、けしき、しくみのヴィジョンを記載した『まちづくりコンセプトブック』としてまとめました。この取り組みでは、まちづくりのプロセスのあり方そのものを新しいかたちで行っていこうということで、このようなアプローチをしています。もうこれ以上、ほぼ同じような顔ぶれのチェーン店が並び、同じような駅前・街並みの新しい街をつくっても、もう仕方ないというか、避けたいのです。地域の歴史と未来を織り込んだ特色のあるまちをどうつくるか。そういう挑戦です。
街が創造性を育み、展開していくことができる場になるにはどうすればいいか、そういうことをコンセプト、ヴィジョン、デザイン要素、空間デザインのイメージなどにまとめました。もちろん、市がこういう街にしていきたいと構想・発信しても、実際にそこに建物を立て運営していくのは企業などになるわけなので、具体的なコントロールはできません。そのため、どうすればコンセプトを理解し、それに合う・共鳴するかたちで実現に向かうことができるのか、今後の課題です。そして、やはり、藤沢市側と鎌倉市側も、接続だけでなく、面で連携できるといいのになと思います」(井庭さん)
さらに「庭プロジェクト」発起人の宇野常寛は、そもそも「新しいもの」がどれほど求められているのか、という論点に踏み込んでいきます。
「鎌倉は本当にいろいろな人が住んでいると思うのですが、その中で市民のニーズ的に『テック×伝統』というコンセプトに対するコンセンサスがどれぐらい取れているのかが気になります。僕個人としては鎌倉が『伝統×日本のシリコンバレー』の街になると言われるとワクワクしますが、そう感じる人が鎌倉に多いとは思えないところがあります。
これは『市民とは誰か』という問題です。自治意識の高い昔からの住民やクリエイティブ・クラスの移住者はそう考える人も多いかもしれないですが、大船エリアなどに多い『普通の会社員』たちはどう考えるか。具体的には、会社員の共働き夫婦が、小学生の子どもをそこで育てていて、休日は軽自動車でショッピングモールに行くといったライフスタイルをとっていたら、いま市に要求するのは比喩的に言えば『流山みたいにしてほしい』ということかもしれないと思います。
僕は鎌倉が好きでよく遊びに行くのですが、行く度に感じるのは“ちぐはぐさ”なんですよね。比喩的に言えば、山の上に豪邸を建てて天空から下界を見下ろしているようなアッパークラスたちもいれば、団塊世代たちが主に暮らす古い住宅地もあれば、自然豊かな土地でスローライフをしたいと考えている人たちもいる。もちろんいま僕が言ったような平成中期の郊外型のライフスタイルをもっている住人も当然たくさんいる。これはかなり多様な住民構成です。しかしこれが鎌倉の魅力でもあると思う。単なる観光地ではなく、ちゃんと人が暮らしている。テーマパーク的『ではない』ところが、居心地の良さを生んでいるのも間違いないと思います。この良さを活かしたかたちの開発を考えないといけないと思います」(宇野)
これに応答したのは、自身も鎌倉市のスマートシティ化に関わる田中浩也さんです。
「宇野さんが言ったように、鎌倉には本当にあらゆる層の市民がいるんですよね。例えばウーブンシティなど、どちらかというと民間主導のスマートシティ構想では、テクノロジーが前面化し、未来技術のショーケースみたいなものができるじゃないですか。でもそれは自治体によってはうまくいかなくて、ウーブンシティも結局、そこが所属していた自治体とは分かれたんですよね。自治体がやりたいDXによる街づくりは、企業がやりたいDXとはなかなか馴染まないのだろうなと、それを見ていて思いました。
一方、鎌倉は企業主導ではないけど、それでいてビジョナリーなものができたら本当にすごいだろうなと最初は思ったんですよ。でも結局、企業がいないと未来技術のショーケース的な方向性にはあまりならない。そして主人公は市民になっていく。結局市民が期待しているのは、日常の少し延長上にある豊かさだと思うのです。
そして、もう一つ鎌倉にないのは総合大学です。そこは現在、われわれ慶應大学SFCのサテライトをつくって、大学が触媒になるという実験をやってみています」(田中さん)
さらに文化人類学者の小川さやかさんも加わり、こうした「モザイク的な住民層」ゆえの問題をいかに解決していくか、に話題は展開していきました。
「鎌倉の一番の課題は、観光都市とモザイク的な住民層をどう両立させるのか、ということなのではないでしょうか。観光都市としてオーバーツーリズムが問題化している。しかし、鎌倉は鎌倉市民だけのものではなく“世界の鎌倉”でもあるわけで、世界中から観光客を受け入れ続けなければならない。その状態を維持しつつ、かなり多様な住民構成の共存や合意形成もやっていかないといけない」(宇野)
「それは実際に中にいても非常に難しい問題で、どんなに意識高い人が市民運動をやっても、残りのマジョリティはそうではないのでそこで止まってしまう。でも逆にそれは多様性とも言えるから、そうしたモザイク性が価値に変わるような構造を考えればいいのだとも思います」(田中さん)
「以前、『WIRED』誌の『ネイバーフッドエコノミー』という企画に関わったことがあります。シンプルに言うと、徒歩圏の、小さな街の中ですべてのニーズを満たすためにテクノロジーを用いる、といった世界観の特集でした。要は『15分都市』のような話ですね。編集長の松島さんも鎌倉に言及しており、鎌倉や逗子ではクリエイティブクラスでも移住者でも、ただその土地が好きな人が集まっている。こういうところこそ、ネイバーフッドをベースにした新しいまちづくりのコンセプトが考えられるのではないかと言っていました」(小川さん)
「それで言うと鎌倉では『中学校圏』という議論があります。鎌倉市内には公立の中学校が9つあるのですが、中学校は、2キロ圏内でだいたい徒歩30分圏内をカバーしているんですよね。そうした中学校圏を中心として、自宅の生ごみコンポストから土を持ち込んでそこで花を育てたり野菜を育てたりというようなコミュニティガーデンができたら面白いと、私は考えています」(田中さん)
「例えば鎌倉の旧市街って大きい病院がなくて、おそらく多くの人は大船に行きますよね? だから実は基本的な都市機能を大船や鎌倉旧市街、そして今度開発するグリーンフィールドにどう割り振っていくのかとかいったことを考えていくことが重要ではないかと思います。その中で、先ほど議論していた階層の問題や、旧住民と新住民の分裂の問題にメスを入れるべきなのではないでしょうか」(宇野)
「僕は米国ポートランドに住んでいたことがあります。ポートランドはいまアメリカで住みたい街の代表格で、クリエイティブとナチュラルが融合したような魅力的な街になっていますが、もともと1970年代以前は公害がひどい街だったんですね。造船が主の重工業の街だったので、何日も光化学スモッグのせいで外で遊べないというような状態だったそうです。そうした中で、『こんな街を次の世代に残せないでしょ』とエコの意識が非常に高まり、自分たちのコミュニティをしっかり継承しようという機運ができたわけです。
一方で鎌倉は、観光産業もあって人が多いけれど、ある意味うまくいってしまっているがゆえに、マイナスの状況から『みんなでなんとかしよう』みたいな団結が起きづらいのではないでしょうか。コミュニティ意識を持って、自分たちの街を自分ごととして捉えられるようになるといいなと思います。ポートランドのダウンタウンなどでは、ビルのオーナーたちが、確かに儲かるけれどもどこにでもあるようなチェーン店を入れないようにして、こだわりのオーナーのクラフトショップや、こだわりのオーナーのレストランなどを入れるようにして、他の地域とは違う独特の魅力を育ててきました。鎌倉にも鎌倉野菜などのこだわりのお店はあると思いますが、まちづくりの面でも団結する理由ができるといいのではないかなと思いました」(井庭さん)
「観光都市だからこそ住みやすい」街を実現するために
では、こうした「モザイク的な住民層」ゆえに生じてしまっている問題の解決に向けて、深沢地区のまちづくりはいかにして寄与しうるのでしょうか。
「旧鎌倉と大船があって、そこに深沢という第三項が加わることによって残り二項も良くなる、というビジョンを示すことが必要だと思います。現状、鎌倉は遊びに行くと楽しい街なのですが、『ちょっと住むのはしんどい』と思っている人は正直多いと思うんです。渋滞もひどいし買い物も別に便利じゃないし、決して生活しやすい街ではない。そういったことが、深沢地区が開発されることによって観光地『なのに』住みよい、あるいは観光地『だから』こそむしろ住みやすい街になっていくのが理想だと思います。
駅前にアトレがあって、そこにユニクロと無印良品とダイソー、スターバックスなんかが入っていて……というのは平成後期の理想のライフスタイルを実現するための街のつくり方だと思います。『うちの街にもユニクロと無印とスタバがあったらいいよね』と思っていた人たちの欲望を実現した結果、日本中の『駅前』が同じフォーマットに統一されようとしている。ただ、実際にこのタイプの『駅前』が便利なのは疑いようがないし、もしそれをつまらない、もっと別のものにしたいというのであれば、その住民たちに『いや、こっちのほうがいいよ』と思わせる強力なビジョンが必要だと思います。それはつまり、『こんな街に暮らしたら、今は手に入らないこんな生活ができる』と住民にビジョンを提示できるもの、特にお金持ちでもクリエイティブでもない普通の人たちの等身大の暮らしに、アップデートを予感させるところまでいかなければいけないはずです。
『駅前が「ありがち」なアトレとバストータリーなのは嫌だから、ウォーカブルシティをつくろう』という発想は、意識の高いクリエイティブ・クラスには響くと思います。しかしいまユニクロと無印良品とダイソーとスターバックスのある駅前が欲しいと思っている人たちにとって、それとは違うのだけれど魅力的なビジョンになっていないといけないと思います」(宇野)
そしてこれからのまちづくりをこうした方向性で検討していくにあたって、重要な役割を果たす機関として「大学」の話題も議論されました。
「10年、20年が経ったときに、『なぜわざわざこの時代にこれをつくったのかが問われる』という感覚を強く持つべきだと思うんですよね。僕のような研究者は、やはり目の前の利害関係などからは比較的自由で、長い時間スパンでものを考えるタイプの人たちだからこそ言えることもある。そういう仲間がもっと増えていくとよいと思いました」(井庭さん)
「そうですね。私は大学の役割はとても重要だと思っていて、スタンフォード大学もパロアルト研究所も、シリコンバレーである種の役割を果たしたわけです。テクノロジーと、さらには文化の部分も含めてアカデミアがやれることはすごく多いのではないかと思います。
そういう意味で私が良い街だなと思っているのは、チューリッヒなんですね。40万人規模の街なのですが、オールドシティとニューシティをうまく分けていて、ニューシティのほうにビジネスをうまく寄せています。駅自体かなりデジタライズが進んでいますし、街中においては歩道と車道と電車の軌道を分断させず、電車が走っている周りをふつうに人が歩けるという点で、交通の面でもおもしろいと思います」(加治さん)
漂白されないスマートシティ化のために
前半でも複数自治体や企業が関わるからこその難しさについて言及がなされましたが、研究会が終盤に差し掛かったタイミングで改めて議論がなされたのが、都市開発における官民連携という論点です。
「例えば尾道の『ONOMICHI U2』は常石造船という民間の造船業者が、尾道の衰退の象徴であるような倉庫を谷尻誠によるリノベーションを施して、サイクリスト向けの多機能なホテルにした。尾道にとってこの『U2』の存在はその後のリブランディングにとって大きな起爆剤になったはずでず。これは私企業が一つコンセプチュアルなものをつくることによって波及効果を狙う、というモデルです。もちろん一連のプロジェクトに対する評価はいろいろあると思いますが、ここで検討しないといけないのは、土地所有者が分散している現状でこのようなモデルも視野に入れないといけないということです」(宇野)
「参考になるかわからないのですが、函館に、はこだて未来大学という公立大学があります。興味深いことに、函館市、上磯町、大野町、七飯町、戸井町の1市4町の函館圏公立大学広域連合でつくったんです(現在は、合併により、函館市、北斗市、七飯町の2市1町となっているようです)。同じような発想で、藤沢市と鎌倉市などが両方で、かつ民間も参加するかたちで組織をつくって、その組織が地域全体を見れるようになればいいのではないか、といったことを考えています。結局、地域の境目は人工的に設定されたものに過ぎないので、複数の自治体や民間組織、教育機関が合弁することでそこの地域について考えられるのが理想ではありますが、まずは民間が動き出せるといちばんいいのかなと思いました」(井庭さん)
そして最後は、まちづくりにおける「雑多さ」の重要性に関する議論で、研究会は締めくくられました。
「そもそも私は『スマートシティ』という言葉が苦手で、何かが漂白される感じがしてしまうんです。少し変な人とか、マジョリティに馴染まない人たちが予測できなかった活性化をもたらすことはよくありますから。私はインフォーマルな空間ばかり研究しているので、そういう雑然としたものを上手に使ってスマートシティがおもしろい場所にならないかと期待してしまいます。専門家が真剣に関わって作り込みすぎると、本当にきれいにつくられて変な人が入り込む余地がなくなってしまう気がします。
だからある意味では、アトレとかもあってもいいのではないかなとも思いました。中国の深圳は全然きれいじゃないから好きなのですが、特定のイメージと伝統に則ってきれいにすると、そうではないものがうまく入り込めないのかなと」(小川さん)
「僕もそう思います。やはり『テーマパーク』感があると住めないなと思うんですよね。僕が京都にもし戻ることになったら、遊びに行って楽しいのは中京区や東山区だけど、結局以前暮らしていた右京区とかにまた住むんじゃないかなと思います。右京区は基本的に住宅地ですが、そのなかにときどきものすごく歴史のある場所が点在している。そこが暮らしていて『ちょうどいい』んです。同じように鎌倉は雑然としたところがいいと思っています」(宇野)
『何もないグリーンフィールドからつくりはじめて、かつ『テーマパーク』にもしないというのはかなり難しいですが、それができたらすごく画期的ですよね」(田中さん)
「渋谷のミヤシタパークの一階に渋谷横丁がありますが、その横にのんべい横丁があることで下町っぽさが担保されています。昔から続いていたものがあって、それが残されたことに意味があると思うのですが、不思議な構造ですよね。その両方があるからこそ良いという感じもします」(加治さん)
「ポートランドに行くと、例えばナイキがキャンパス(ナイキ本社の敷地)にもともとあった地形や植生を生かして、それによって建物の図面を変える設計をやっていたということを、誇らしげに紹介されるんですよね。そういうことがもっといろいろなところで起きるといいと思いますし、例えば鎌倉なら『なぜ坂をこんなに残しているかというと、かつてはこういう地形だったんだ』というようなことが歴史とともに語られるようなありかたが似合うなと思います。しかもそれが海外の人たちにもアピールできるといいですよね」(井庭さん)
[了]
この記事は小池真幸・徳田要太が構成・編集をつとめ、2024年9月12日に公開しました。Photos by 蜷川新。